コンサルの実例を見たい!ケーススタディ

ケース3 : 銀行の個人向けアパートローンを使った運転資金調達

中古車販売業A社の場合(大阪市 年商20億)

概要

メインバンクが折り返し融資を拒否!どうしても資金調達したい!
業歴約10年で銀行からの信用も厚く、メインの都市銀行から事実上3億円の融資枠をもらっていた中古車販売業者のA社。
3億円の借入は3ヵ月ごとに5000万円の約定返済の決まりになっていましたが、5000万円の約定返済をすると同時に5000万円の折り返し融資をしてもらえるという暗黙の了解のもと関係を続けて来ました。
ある日、担当者が来てこう言うのです。
「社長、前期の決算の格付けを出したところ、枠が2億円になっちゃったんで、今回と次の約定返済は折り返しできませんから。ただ、また2億の範囲内では折り返し融資やっていきますから。」
驚いたのは社長です。今回の約定返済も通常通り折り返し融資をしてもらえると思っていたので、そんな返済資金は用意していませんし全て車の仕入れに資金を費やしています。
「今月末の5000万円と3ヵ月後の5000万円……仕入れを全くしなければ作れない金やない。けど、この中古車の買い取り販売っていう業界は現金での買い取りが命。一度仕入れルートを切ってしまうと、二度と戻らない可能性があるんや……。」
社長は、困り果てた様子で当社事務所に来られました。
選択肢は2つ。「仕入れを止める」「資金調達をする」ですが、仕入れを止める事はどうしてもしたくないとのこと。さあ、どうしましょう。

この会社が抱える問題点

  • 「暗黙の了解」という不確実性が残るルールの中で銀行との付き合いを続けていた。

解決策

個人向けアパートローンで借入を使い、資金調達を実行

ここがポイント!:「個人向けアパートローン」で、資金調達!
無担保で5000万円×2回分=1億円の資金を調達するのは非常に困難です。今回、A社法人で7年前に約3億円、12年ローンで買った収益マンションがあり、さらにこのローンの融資期間が12年と短いスパンである事が幸いしました。(概ね銀行が法人に長期融資を行う際、12年~15年が最長となる事が多い。)つまり、既に元金返済をたくさん行っていて、担保余力が出ている状態と言うこと。予想通り残債は1億2000万円程度。これを概ね時価の2億4000万円で社長個人に売却。社長個人は銀行から「個人向けアパートローン」で借入できます。

その結果

ノンバンクから運転資金4000万円調達!

今回の教訓より、余裕の無い拡大路線を是正。手元資金に余裕を持たせた経営方針に転換。

その結果

良い物件だけを仕入れるようになったために利益率が向上!売上高は減少したものの、各銀行へ自社の経営戦略を事前に説明していたため、取引も良好に継続。

社長さんからの声

メインバンクが毎回折り返し融資をしてくれていたのに、急に融資枠を3億から2億に減らされて‥何がいけなかったんでしょうかね。。

スタードックスからコメント

ひとつ前のケーススタディと同じく、どのような要件で銀行が融資の厳格化に向かうかは正直予想できない部分もあります。銀行は決算数値をコンピューターに入力して「企業格付」を算出しますが。この格付けは様々な指数のポイント制になっており、たった1ポイントの低下で A⇒B という風に格付けが下がる可能性があります。
銀行により例えば「Aの格付け先は、支店長決裁3億円までですよ。」「Bの格付け先は、支店長決裁2億円までですよ。」
と決まりがあるため、決算書のポイントがわずか1ポイント下がっただけで「1億円の借入枠が減る」可能性がある訳です。
また、今回の社長は「3億円の枠がある」とおっしゃっていましたが、実際3億円の融資枠をとりますよ、という契約はどこにもありません。存在する契約は「3億円を借りて3ヵ月ごとに5000万円を約定返済する」というものです。
こういう暗黙の了解で借入を行っている会社は銀行と交渉して「コミットメントライン」(※)などへの融資形態へ切り替えるのもひとつの方法です。

(※):「コミットメントライン」=銀行が取引をしている企業にたいして定めた融資枠。銀行と取引先の企業があらかじめ融資の上限枠を協議しておき、この融資の枠内でなら一定期間いつでも審査を必要とせずに銀行が企業に資金を提供することを保証する制度。企業にとっては、審査の必要がないため迅速な資金調達が可能になるというメリットがある。また、迅速かつ容易に調達できる資金があるために企業は流動資金を減らすことができ、貸借対照表のスリム化が実現される。ただし、通常の金利とは別にコミットメントフィーなどの手数料がかかる事が多い。